2014年11月25日に医薬品医療機器等法(薬機法;「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)が改正施行され、ソフトウェア単体も「医療機器プログラム(SaMD:Software as a Medical Device)」として医薬品医療機器等法の規制の対象になりました。
「医療機器プログラム」(注1)は、①疾病の診断、治療、予防に寄与するなど、医療機器としての目的性を有し、かつ、②意図したとおりに機能しない場合に患者(又は使用者)の生命及び健康に影響を与えるおそれがあるプログラム(ソフトウェア機能)となっており、汎用PCやモバイル端末等にインストールして医療機器としての機能を与えたり、これまでの医療機器と組み合わせたりして使用されます。
このため、同じ機能を有するプログラムであっても、使用目的によって医療機器の該当性の判断が異なります。また、クラスⅠ(機能の障害等が生じた場合でも人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの)に相当するプログラムは医療機器の範囲から除外されていることが、これまでの医療機器とは大きく異なっています。
「医療機器プログラム」は、①疾病診断用プログラム、②疾病治療用プログラム、③疾病予防用プログラムの3つに類別されています。当初の医療機器プログラムは、既承認の医療機器に搭載されていたソフトウェアを、プログラム単体として認証・承認を受けたものがほとんどでしたが、最近では、AI技術を活用した画像診断支援などの革新的な医療機器プログラムが次々と承認されています。また、行動変容を促す治療アプリが承認されるなど、モバイル端末などを医療やヘルスケアに利用するデジタル医療、デジタルヘルスとしても注目されています。
こうした「プログラム医療機器」の開発や実用化を加速するために、様々な取り組みが進められています。例えば、2020年9月には、プログラム医療機器のバージョンアップに速やかに対応できる制度として、「医療機器の特性に応じた変更計画の事前確認制度(IDATEN制度)」(Q8参照)がスタートし、同年11月には、厚生労働省から「プログラム等の最先端医療機器の審査抜本改革(DASH for SaMD)」が公表され、最先端のプログラム医療機器の早期実用化を促進するための一元的窓口として「医療機器プログラム総合相談」がPMDAに設置されています。
また、「医療機器プログラム」の該当性に関しては、「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」(2014年11月14日)が発出されていましたが、これをより明確化・精緻化するために、「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」(2021年3月31日)(注2)が公表されました。これには、基本的な考え方に加えて、該当性判断事例も記載されています。
さらに、2022年6月7日に閣議決定された「規制改革実施計画」の「プログラム医療機器(SaMD)に関する承認審査等の見直し」に基づき、「医療機器プログラム(SaMD)の審査ポイント」や「医療機器プログラムの認証基準」の公表・策定(注3)が進められています。前者は、2014年以降に承認を取得した「医療機器プログラム」から、審査のポイントに関する情報を整理して順次公表するもので、後者は、承認実績が存在する医療機器プログラムについては、認証基準の策定及び改正を行うものとなっています。また、2022年度の診療報酬改定では、プログラム医療機器の新たな診療報酬上の評価についての検討が進み、「プログラム医療機器等医学管理加算」の項目が新設されています。
こうした変化の激しい分野では、研究開発や臨床研究を実施する上で、PMDAのホームページなどで常に最新の動向や取り組みについて把握しておくことが重要となります。
(注1)「医療機器プログラム」はプログラム単体として流通するもので、プログラムを記録した記録媒体も含めたものは「プログラム医療機器」と呼ばれています。
(注2)薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第15号「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」(令和3年3月31日)
(注3)PMDA「医療機器プログラム(SaMD)の審査ポイント」(参照2022-12-16)
(2022年12月16日時点の記載です。)