医療機器プログラムにおいても、有効性の評価のために、人を対象として承認申請のための試験を実施する場合、原則、GCPに準拠した臨床試験(治験)になります。
一方で、例えば、画像診断プログラムの有効性は、非典型的なものを含めて様々な症例画像に対して評価することが求められます。しかし、治験で求められている前向きでの症例画像の収集方法では、患者同意を取得しても、それが非典型的な症例の画像であるかどうかは撮像後でないと分かりません。このため、評価対象の画像を効率的に収集することは困難で、現実的でないことも多々あります。
こうした場合、治験ではなく、体外診断機器の有効性評価で用いられている臨床性能試験の枠組みを利用することが可能でした。この取り組みは、当初、例外的位置づけとなっていましたが、令和3年9月29日に発出された通知「追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた診断用医療機器の性能評価試験の取扱いについて(薬生機審発0929第1号)」(注1)において、「性能評価試験」として、以下の通り明確化されました。
この通知は、人工知能技術を利用した医用画像診断支援システムやDNAシークエンサーを利用した遺伝子変異解析システム等の診断用医療機器を対象とし、追加的な侵襲・介入(診断結果の伝達を含む。)を伴うことなく、「既存の医用画像データ又は生体試料及びこれらに関連する既存の診療情報等」(医用画像データ等)を収集して実施する性能評価試験が対象となっています。この医用画像データ等には、通常の診療で得られたものだけでなく、バイオバンク、データベース等において提供されているものも含まれますが、介入を伴う臨床研究等で得られるデータは除外されています。
「性能評価試験」は、診療情報を使用するかどうかで、以下の2種類に分けられます。
- 既存の医用画像データ又は生体試料のみを収集し、新たに評価上必要な情報等を付ける等した上で、性能評価に用いる場合
これは、試験に使用するデータ等の信頼性確保のために、原資料(カルテ情報等)との照合ができるようにしておく必要がない場合で、承認申請時の添付資料の位置付けは、「設計及び開発に関する資料」になります。 - 既存の医用画像データ又は生体試料及びこれらに関連する既存の診療情報を収集し、性能評価に用いる場合
これは、試験に使用する診療情報の信頼性確保のために、原資料(カルテ情報等)との照合ができるようにしておく必要がある場合で、承認申請時の添付資料の位置付けは、「臨床試験の試験成績に代替する資料」になります。
後者の場合、例えば、評価対象の画像の正解データとして確定診断の情報等用いることが可能となりますが、「試験に使用するデータ等の第三者への提供・開示及び承認申請を含む商用利用に関する患者等の同意が適切に得られていることについて、承認申請時にPMDAの求めに応じて申請者が根拠資料に基づいて説明できること。」となっていることに留意する必要があります。
(注1)「追加的な侵襲・介入を伴わない既存の医用画像データ等を用いた診断用医療機器の性能評価試験の取扱いについて(令和3年9月29日薬生機審発0929第1号)」
(2022年10月1日時点の記載です。)