特定機能病院注1)における重大な医療事故の発生を踏まえて、医療安全対策の強化の方向性が検討された結果、特定機能病院の承認要件の見直しが行われました。

特定機能病院においては、診療科の長は、次の①と②については、あらかじめ、特定機能病院の管理者が設置する部門(「担当部門」)に申出を行い、承認を得る体制に変更されます。

①「高難度新規医療技術」を用いた医療の提供
②「未承認新規医薬品等」を用いた医療の提供

ここでの「高難度新規医療技術」とは、当該病院で実施したことのない医療技術(軽微な術式の変更等を除く。)であって、その実施により患者の死亡その他の重大な影響が想定されるものになります。例えば、既承認の医療機器であっても、患者の死亡その他の重大な影響が想定されるもので、当該病院で実施したことのない医療技術に当たる場合は、①の対象になります。また、「未承認新規医薬品等」とは、当該病院で使用したことのない医薬品又は高度管理医療機器であって、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)における承認又は認証を受けていないものになります。つまり、未承認医療機器を用いた臨床研究で、当該病院でこれまで使用したことがないリスクの高い高度管理医療機器(クラスⅢ、Ⅳ)を用いた場合は、②の対象になります。

各特定機能病院は、厚生労働省が発出した基準注2),3)に従って規程を作成注4)し、臨床研究を実施する診療科等はこの規程を遵守することになります。具体的には、対象となる臨床研究は、新設の「高難度新規医療技術評価委員会」、あるいは「未承認新規医薬品等委員会」と倫理審査委員会の両方で審査を受けることになります(既存の倫理審査委員会が上記の基準を満たす場合には、評価委員会を兼ねることもできます)。なお、臨床研究法に基づき認定臨床研究審査委員会で審査される臨床研究については、「高難度新規医療技術評価委員会」、あるいは「未承認新規医薬品等委員会」の審査は不要です。提供する医療が、「高難度新規医療技術」や「未承認新規医薬品等」に該当するか否かは、一義的には診療科の長の判断によりますが、判断が困難な場合には「担当部門」の意見を聞くことになります。また、病院で実施したことのある医療技術、使用したことのある医療機器であっても、従来の実施体制に大きな変更があった場合には、診療科の長は、改めて適切な実施体制の確認を行う必要があります。

これらの特定機能病院の承認要件の変更は、2016年6月10日付けで交付され、2017年3月には経過措置が終了したため、2017年4月から運用が開始されています。また、一般的な病院においても、高度な医療技術を提供する場合などには、特定機能病院に対する規定を参考に、同様の取り組みを求める努力義務が課されることになります。
(2020年1月24日時点の記載です。)

(注1)平成5年4月施行の医療法の第2次改正によって制度化された医療機関の機能別区分のうちのひとつ。高度な医療を提供する医療機関について、厚生労働大臣が個別に承認するもので、承認要件が定められている。
(注2)医政発0610第21号「医療法施行規則第9条の23 第1項第7号ロの規定に基づき高難度新規医療技術について厚生労働大臣が定める基準について」(平成28年6月10日)
(注3)医政発0610第24号「医療法施行規則第9条の23 第1項第8号ロの規定に基づき未承認新規医薬品等を用いた医療について厚生労働大臣が定める基準について」(平成28年6月10日)
(注4)「高難度新規医療技術の導入プロセスに関するQ&A」(高難度新規医療技術の導入プロセスにかかる診療ガイドライン等の評価・向上に関する研究班作成)