医療機器のユニークデバイス識別(Unique Device Identification: UDI)は、医療機器の製品仕様の日本米国欧州間の統合整合化を審議する国際医療機器規制当局者フォーラム(IMDRF)が2011年に発行した「医療機器ユニークデバイス識別ガイダンス」に挙げられている①個々の医療機器に対するバーコード識別表示と②国家レベルの製品情報のデータベース登録に対応する措置のことを指します。①医療機器の識別表示では、i)製品機器識別情報として、製品名、製品コード(機種)、製造業者名などの固定データとともに、ii)製造識別情報として、機器の有効期限日、ロット番号、シリアル番号などの可変(=機器毎に固定でない)データを示すことが求められています。また、②データベース登録については、各国の保健当局によって対応が異なります。

UDIの運用は、医療機器や医療材料に関して、それぞれの製品情報を中央管理し、トレーサビリティーを確保することにより、医療安全の向上(医療機器に関連した合併症や医療過誤の原因解明と予防策の構築、感染対策、医療機器使用の標準化・平均化)を主たる目的とし、医療機器流通に掛かる負担軽減(リコール・返品業務の効率化、偽造医療機器の排除)と行政視点での医療機器に掛かる医療費の不適切な保険償還請求の防止もその目的になっています。

UDIは、米国FDAでは2014年から医療機器クラスに応じて罰則規定のある法律として義務化されていますが、欧州委員会では検討段階で未施行です。日本(厚生労働省)ではバーコードによる医療機器の識別表示が罰則規定のない省令として求められていますが、データベースによる中央管理は実施されていません。したがって、国内で開発製品化された医療機器を米国に向けて輸出する際にはUDI対応を検討しなければいけないことになります。ただし、IMDRFのガイダンスに基づくUDI対応は、日本としても国際整合性の確保から避けられず、近い将来に厚生労働省から通知が発出され、米国向け輸出機器だけでなく、国内向けおよび欧州向け医療機器でもUDI対応が義務化されることが予想されます。米国FDAのデータベース(Global UDI Database: GUDID)はweb上で公開されており、誰でも医療機器を検索し、その情報をダウンロードできるようになっています。例えば、MRI対応の可否や再滅菌の可否などの情報を得ることが出来ます。

それでは、医療機器の臨床研究を行う際に、UDI対応はどのような意味を持つでしょうか?国内で臨床研究の対象となる適応外・未承認医療機器は、医療機器識別バーコード表示の義務化ルールの範囲外でありUDI対応は必須ではありません。ただし、UDIの理念にある医療安全の観点は、臨床研究における副作用発現時の原因究明や臨床研究の継続にとって重要な評価となりますので、UDIを意識した医療機器管理は試験を実施する研究者にとって有用であると考えられます。
(2020年1月24日時点の記載です。)

(参考文献)
黒澤康雄. FDA, 各国規制当局のUDI規制の進捗 –規制をクリアした医療機器の市場対応と輸出拡大のために-. 医療機器学 2015: 85: 345-53